顔面神経麻痺

顔面神経麻痺はある日突然顔面が歪み、その精神的苦痛は大きく、30歳から50歳台の働き盛りに多くみられます。急性に発症する顔面神経麻痺の多くは下図のように、Bell麻痺とHunt症候群が全体の3/4を占めます。

顔面神経麻痺

ニューヨークの神経内科医 James Ramsay Huntは、顔面神経麻痺患者の中に耳介の帯状疱疹と難聴、めまいを併発するグループがあることを報告し、後にこの原因が水痘と同じウイルスであることがわかり、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)と言われるようになりました。Bell麻痺の原因は、最近その多くは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)であることがわかってきました。

冷たい風に当たったり、精神的・肉体的ストレスや免疫能低下を契機として、顔面神経の膝神経節に潜伏感染していたウイルスが再活性化され、その神経分布領域の皮膚粘膜に疱疹を形成します。また同時に神経障害を起こすことが知られています。

Bell麻痺とHunt症候群の臨床像

Bell麻痺は後頭部痛や肩こりを前駆症状とする一側の顔面神経麻痺のみを生じます。Hunt症候群は顔面神経麻痺のほか耳介の帯状疱疹や難聴、めまいを伴う疾患です。ただし、これらすべての症候がそろわない不全型Hunt症候群もあり注意が必要です。帯状疱疹やめまい・難聴がなくても強い耳の痛みや味覚障害を訴える場合は、不全型Hunt症候群として治療した方が無難です。⇒ベル麻痺の実践的治療(村上信五 2015年)

顔面神経麻痺

治  療

1.抗ウイルス薬でウイルスの増殖を抑え、ステロイドホルモンで神経の炎症やむくみを取ります。血流改善や神経再生を目的として循環・代謝賦活薬、ビタミン製剤も用います。
2.抗ウイルス薬とステロイドは、初期の神経変性を防ぐために重症例では発症3日以内に開始することが重要です。
3.麻痺の重症度に応じた治療を行います。

1)Hunt症候群−中・高度麻痺例−

Hunt症候群−中・高度麻痺例

2)Bell麻痺−高度例−

Bell麻痺−高度例

3)Bell麻痺−軽症例−

Bell麻痺−軽症例
注: ステロイドによる消化管潰瘍を予防するために抗潰瘍薬を併用したり、兎眼による角膜乾燥を予防するためにヒアルロン酸点眼液を併用する。また、高血圧や糖尿病など基礎疾患のある場合は入院管理下の治療を要する。
  • 顔面神経麻痺リハビリテーション

発症3週〜3ヵ月で顔面神経麻痺が完治しない症例では、迷入再生を抑制して病的共同運動を予防軽減するため、1)強力な随意運動を避け、2)頻回のマッサージを行い、3)眼瞼挙筋による眼輪筋ストレッチを行う。

参考: 「ヘルペスウイルスと顔面神経麻痺」名古屋市立大学医学部 耳鼻咽喉科 教授  村上信五,「話題の医学」TV(日医生涯教育協力講座、企画:(社)日本医師会  提供:万有製薬)
栢森良二:顔面神経麻痺リハビリテーションの新しい展開.日耳鼻117:86-95,2014
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