咽頭の魚骨異物

のどの異物で診療所を受診される方のほとんどが咽頭の魚骨異物です。それも7月8月はウナギや鮎(あゆ)の骨をのどに刺して来院される方が多く見受けられます。咽頭魚骨異物はそのほとんどが左右どちらかの口蓋扁桃か、その周辺に刺さっていることが多く、細く小さい骨だと見逃してしまうので、手術用顕微鏡でよく見ながらピンセットで抜去します。

咽頭側壁になければ、左右どちらかで舌根から喉頭蓋谷にかけての中咽頭前壁に刺さっているのがほとんどです (図1矢印) 。この場合、鼻腔粘膜をよく表面麻酔して、処置ができる鉗子孔付きのビデオスコープを鼻腔経由で中咽頭まで挿入します (鉗子孔付きファイバースコープが普及する以前は、間接喉頭鏡下に喉頭鉗子で摘出していた)。

咽頭魚骨異物 spacer 魚骨異物摘出
図1 右舌根部に刺さった魚骨 図2 鉗子で魚骨を把持

図2のようにモニター直視下に鉗子で魚骨を把持し、スコープごと三位一体で抜去します。鼻咽腔以外はほとんど触れませんので、のどの反射が強い方でもゲェーゲェーすることなく楽に摘出できます。

            
咽頭魚骨異物 spacer 魚骨異物摘出 spacer 魚骨異物
図3右舌根部に刺入した
魚骨 (サバ)
図4刺入部の近くを鉗子
で把持して抜去した
図5摘出した全長3cmの
サバ魚骨

食道入口部の異物

食道入口部といっても正式には下咽頭輪状後部で、普段は閉じていて逆流を防いでいます。嚥下時に外喉頭筋群が収縮して喉頭は前上方に挙上し、輪状咽頭筋が緩んで食道入口部(下咽頭輪状後部)が開きます。大学病院勤務時代は、小児ではコイン、老人では義歯やPTP (錠剤やカプセルのpress through package) 異物をよく経験しました。これらは全て食道入口部(下咽頭輪状後部)につかえて動かない。患者さんは痛くて唾液が飲めず、つらそうに紹介受診されます。小児の気管支異物以外は、ほとんど内視鏡外来で局所麻酔下に硬性鏡といって、光源から導かれたライトガイドを備えた金属製の筒の先端を口から食道入口部まで進め、直視下に異物鉗子でつかんで摘出します。硬性鏡を使うため、局所麻酔下ではかなりの辛さを覚悟しなければなりません。ただし、この手技は熟練を要するため、専門医のいる施設でないと危険です。

また、両端にフックを有する部分義歯床の場合、最初から全身麻酔下にアプローチします。金属のフックが食道入口部に食い込んで硬性鏡下に外せない場合は、無理をせずに頸部外切開に切り替えます。その場合、左胸鎖乳突筋前縁に沿った皮膚切開で胸鎖乳突筋と総頸動脈を筋鈎で外側に引き、左甲状咽頭筋を切断して甲状軟骨を右に翻転します。異物を触れる部を切開して咽頭腔に入り摘出します。

        

胃内落下異物

口から肛門に至る消化管で一番狭い食道入口部(下咽頭輪状後部)を通過したものは、ほぼ全例便にくるまって排出される。ただしボタン型電池を誤飲した場合は緊急に摘出しなければなりません。また、誤飲した義歯による腸管穿孔例が報告されており、腹膜炎の徴候出現時は速やかに外科的に摘出できる態勢のもと、経時的に腹部X線で移動を確認しながら排出を待つのが得策です。

お子さんや老人のいるご家庭では、誤って飲み込まないよう注意しましょう。また、高齢者では腫瘍が原因で通過障害を来たした食道異物もごく稀にみられます。

危険! ボタン型電池の誤飲はほとんどが小児で、アルカリ電池が胃内に停留すると胃酸で表面金属が腐食され、アルカリ性物質が流れ出て胃壁を損傷する。リチウム電池は放電による電気分解で電池外側にアルカリ性液が生成されるため、胃酸のない食道内でも非常に短時間で潰瘍を形成する。
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