花粉症の漢方治療

みなさんの中には、花粉症で夜1回、あるいは朝・夕1日2回お薬を服用していても、鼻水がでて、のどがイガイガして咳がでることはありませんか。また、朝・晩1日2回ステロイドの点鼻をしているのに、鼻づまりがとれなくて頭痛がすることはないですか。

くしゃみ 鼻水 せき 頭痛

このような場合、鼻アレルギー診療ガイドラインには、ステロイドと抗ヒスタミン薬の合剤(セレスタミン®)やステロイド薬(リンデロン®、プレドニン®など)を1週間だけ内服してよいということになっています。

しかし、眠け・他の副作用や妊娠・授乳中で内服できない場合もあるでしょう。こんな時には漢方薬がよい適応です。

まずはアレルギー性鼻炎で有名な小青竜湯(しょうせいりゅうとう)(麻黄、桂枝、半夏、細辛、乾姜、五味子、芍薬、甘草)の五味子(ごみし)は酸っぱい味で、皮膚や粘膜を引き締め、水を外に出さないようにする薬能で鼻水を止めます。さらに咳や痰を軽くする半夏(はんげ)、細辛(さいしん)、乾姜(かんきょう)が配合されています。

次は葛根湯加川キュウ辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)(麻黄、桂枝、芍薬、甘草、大棗、葛根、川キュウ、辛夷)で、その名の通り葛根湯に川キュウ(せんきゅう)と辛夷(しんい)を加えた処方です。川キュウは頭痛を、辛夷は鼻づまりをとります。

したがって、くしゃみ、鼻水、咳・痰には小青竜湯を、鼻づまり、頭痛には葛根湯加川キュウ辛夷を使い分けています。これらはどちらも、葛根湯や麻黄湯と同じく、〈麻黄(まおう)・桂枝(けいし)〉の組み合わせを持っており、「表寒証(ひょうかんしょう)」の「体表を温めて発汗させ、体表の水を体外に追い出す」処方です。「裏寒症(りかんしょう)」、言い換えれば身体の芯が冷えている場合には麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)を用います。

逆に、顔が赤く熱っぽい、鼻の粘膜が赤い「熱証(ねっしょう)」には、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)(石膏、知母、黄ゴン、山梔子、升麻、麦門冬、枇杷葉、百合、辛夷)を鼻づまりに用います。

次に「熱証で鼻水」のタイプには麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)(麻黄、杏仁、甘草、石膏)、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)(麻黄、石膏、蒼朮、生姜、大棗、甘草)など清熱剤を用います。麻黄と石膏の組み合わせが体表の水を吸収します。

漢方薬は飲んですぐ効く速効性がありますが、効果が持続しません。したがって、1日に何度も飲まなくてはなりません。また1包で効かなければもう1包と、人によって効果がでる量が違います。これは西洋薬でも薬の効果が出やすい人と、出にくい人がいるのと同じです。薬が効きやすい人は半量でもよいことがあり、常用量を飲むと思わぬ副作用がでて困ることもあります。

漢方でも、おしっこが出にくい(排尿障害)お年寄りが、小青竜湯や麻黄湯、葛根湯などの麻黄剤を、効かないからと何包も追加して飲むと、おしっこが出なくなる(尿閉にょうへい)ことがあります。やはり、お薬は自分で勝手に飲まないで、医師や薬剤師に相談して飲むようにしましょう。

(2007.3)