おもしろい剣豪小説−軍鶏(しゃも)侍−

最近、本は時代小説しか読まない。かなり面白く十分に楽しめた一冊を紹介する。この手の読み物が好きな方はもうすでにお読みになられたかも知れないが、まだ読んでいない方は是非ご一読を。それは「軍鶏侍」野口 卓、祥伝社文庫である。

侍

主人公の岩倉源太夫(げんだゆう)が若くして隠居の身となり、園瀬藩の道場主で藩士およびその子弟を指導するという設定がいい。闘鶏の美しい強い軍鶏に魅せられ、中でもイカズチというやつが一撃で敵を倒すところから”蹴殺(けころ)し”という必殺剣を編み出すというのもいい。藩からの上意討ちの命で江戸で同門だった旧友や殺人の罪で後妻の前夫と、はたまた果たし合いを申しこむ浪人と立ち会う(決闘する)ことになる武士の一分が描かれている。

子や弟子たちを思いやり、人を育てる源太夫と妻みつのあふれる愛情の深さに感服し癒される。毎日読むのが楽しみで残り少なくなると寂しいが、これには続編があるのだ。それが「獺祭(だっさい) 軍鶏侍A」である。ここで初めて秘剣”蹴殺し”が使われるというのだから読まずにはいられまい。それに何と言っても文庫本というのも手軽でいい。私に脚本、監督の才があったらぜひ映画化したい作品である。


※因みに上意討ちとは「主君の命を受けて、罪人を討つこと」

2012年2月11日

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