原 因

1. 突発性:原因が特定できない突発性が大部分を占める
2. 先天性:大半が涙道プロービングで対処できるが、生後6ヵ月を過ぎて涙道感染による炎症が遷延して涙管チューブ挿入や手術を要することもある
3. 外 傷
4. 腫 瘍
5. 医原性:鼻副鼻腔手術で鼻涙管を損傷したり、下甲介切除術後に下鼻道 (鼻涙管開口部) が閉塞
6. 薬剤性
涙道

症 状

鼻涙管が閉鎖すると、

1. なみだ目 (流涙)
2. 目やに (眼脂)
3. 涙嚢内で感染が生じて涙嚢炎になると目がしらが赤く腫れる

図1 涙の排出経路 (涙道)spacer

(涙道閉塞症 KOMPAS慶應義塾大学病院医療・健康情報サイトより引用一部改変)

診 断

涙道閉塞の症状があると通常、眼科を受診します。

(眼科)

1.涙洗針による涙点からの涙道通水テストを行い、涙道閉鎖していると患者は鼻内に排液を感じない。その際に膿が多量逆流すれば、涙嚢炎を併発している可能性があります。 術前に、
2.涙道造影 (CT)を行い、涙道閉塞がなければ、造影剤が涙嚢・鼻涙管壁にわずかに付着するのが観察されますが、閉塞していればCT冠状断で閉塞部位を同定でき、術式選択の有用な情報となります。

(耳鼻咽喉科)

眼科で検査・診断されて耳鼻咽喉科にコンサルトされると、術前診察を行います。鼻の手術歴や外傷の既往について問診します。鼻内を観察し、とくに鼻中隔湾曲がないかをみます。鼻中隔湾曲の凸側が涙道閉塞側にあると、たとえ涙嚢鼻腔吻合術 (DCR) が可能でも、術後処置が難しくなります。鼻中隔湾曲は、中甲介や鈎状突起がスコープで十分観察できないほど狭ければ、自覚的に鼻閉がなくても、術後処置のために鼻中隔矯正術が必要になります。

スコープで鼻疾患、特に鈎状突起周辺にポリープ様病変がないか、鼻腔から涙嚢・鼻涙管へのアプローチに問題となる疾患がないか、中鼻道だけでなく下鼻道も観察します。

治 療

涙道閉塞症はその種類、程度により、涙道プロービング、涙管チューブ挿入術、涙嚢鼻腔吻合術 (Dacryocystorhinostomy,DCR) が選択されます。

1. 涙道プロービング:先天性鼻涙管閉鎖症では、涙道プロービングで治癒が可能
2. 涙管チューブ挿入術:鼻涙管狭窄症であれば、涙管チューブ挿入術で軽快します
ここまでは眼科での治療となります。耳鼻咽喉科医が関与するのは、以下
3. 涙嚢鼻腔吻合術(DCR):1,2で治癒できなかった鼻涙管閉鎖症

DCR には鼻外法と鼻内法があります。鼻外法は顔面皮膚を切開し、上顎骨を露出・削開して涙嚢と鼻腔粘膜を縫合します。

涙道の解剖 spacer 中鼻道側壁
図3 右中鼻道側壁
図2 涙道と鼻腔の関係 (春名眞一:内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)の進歩と今後の展望から拝借)

鼻内法は鼻涙管閉鎖側の外鼻孔から、内視鏡下に中鼻道側壁の鼻粘膜を切開、骨削開して涙嚢壁を露出する。涙嚢壁を切開・開窓し、ドレーンチューブを挿入・留置して涙嚢と鼻腔粘膜を縫合します。ドレーンチューブ抜去後、再狭窄しないよう鼻粘膜、涙嚢壁切開に際して様々な工夫を施しています。

手術の成否は術者の熟練度によりますが、涙道閉塞症を扱う眼科専門医との協力も大切な要因となります。

(藤坂実千郎・他:涙嚢鼻腔吻合術(DCR)について.耳展 59:2;66-72,2016より引用一部改変)


このページの先頭に戻る