リストマーク苦痛の少ない経鼻内視鏡検査

リストマーク声が嗄れたら

リストマークのどが痛くて飲み込めない

リストマーク呼吸が苦しい

リストマークのどに物がつかえる

リストマーク咽頭・食道異物

苦痛の少ない経鼻内視鏡検査

上部消化管汎用ビデオスコープ

内視鏡検査は、のどをいかに上手に麻酔しても多少なりとも苦痛を伴います。この苦痛を軽減するのに静脈麻酔があります。点滴注射から鎮静剤を注入して、眠っている間に検査を済ませるものです。もう一つは、細径の内視鏡を鼻腔経由で挿入するものです。耳鼻咽喉科医は昔から気管支ファイバ−スコピ−などは経鼻的に行っていましたが、最近はビデオスコ−プが細径となり、内科でも経鼻上部消化管内視鏡検査の導入が広がりつつあるようです。これだと反射の強い咽頭を刺激せずに食道内に挿入されるため、スコ−プを飲み込む際のつらいゲ−ゲ−はかなり軽減されます。(写真は OLYMPUS GIF TYPE XP150N 外径5.5mm)

以下に実際の経鼻内視鏡検査を供覧します。

まず、検査の目的を説明し、受ける意思を確認してから、鼻腔粘膜を表面麻酔薬(4%キシロカイン®)と血管収縮薬(5000倍ボスミン®)で充分麻酔します。次に、2%キシロカインビスカス5mlを5分間、のどの奥に保持してもらった後、飲み込んでもらいます。反射が強そうな人には8%キシロカインを咽頭後壁に1,2回追加スプレ−してから検査を開始します。

鼻腔 体位は座位から上半身を45度倒した半座位で、患者さんと対面しますから、モニタ−画面の上下はそのままで、左右が逆になります。鼻腔粘膜は収縮して鼻道が充分に拡がっており、痛みや出血なく楽にスコ−プを進めることができます。
後鼻孔、鼻咽頭(上咽頭) 鼻の奥の突きあたりが鼻咽頭(上咽頭)です。ここから下方の中・下咽頭へと進めていきます。
下咽頭左梨状陥凹底 下咽頭左梨状陥凹底です。ここまでは病変を認めませんでした。ここから送気しながら、嚥下とともに下咽頭輪状軟骨後部、頸部食道へと入っていきます。
下部食道のカマボコ異物 下部食道に、前日食べたカマボコが通過せずに停滞しています。
胃噴門部腫瘍 このケースは、胃噴門部右壁に突出した腫瘍のため、食事の通過障害をきたしていたことがわかり、専門病院へ紹介となりました。

声が嗄れたら

カゼをひいた時に、急に声が出なくなったら、急性喉頭炎が原因です。のどが真っ赤に炎症を起こして乾燥した状態です。この場合、かかりつけ医にカゼ薬を処方してもらって内服し、家庭用の吸入器で水道水でよいですからのどに湿り気を与え、約1週間発声を控えることで徐々に改善してきます。しかし、痛みが強くて物が飲み込めないとか、犬の遠吠え様の咳や呼吸がゼーゼーするといった症状がある時は、急性喉頭蓋炎急性声門下喉頭炎(仮性クループ)の恐れもあるので、すぐに耳鼻咽喉科を受診してください。

カラオケや応援などで長時間大声を出した後の声嗄れは、無理な発声による声帯の乾燥やむくみが原因です。この場合も、約1週間のどの吸入をしたり発声を控えることで徐々に改善してきます。1週間安静にしても改善してこない時は、声帯ポリープができていないかどうか耳鼻咽喉科で見てもらうようにしましょう。

声帯ポリープ

1ヶ月以上続く慢性の声嗄れの原因としては、声の使いすぎによる声帯結節ポリープ(右図矢印)、加齢現象による老人性の声嗄れが比較的多くみられます。声を使う職業の代表として歌手、保育園・幼稚園・小学校の先生の声帯結節が多く、それぞれ謡人結節(singer's nodule)、教師の結節(teacher's nodule)といわれます。

声帯ポリープ

一定期間(約3〜4週)無理な発声を控える沈黙療法、言語聴覚士(ST)による発声訓練指導で結節が消えます。3〜4週も休んでいられない、声嗄れが高度、結節が大きい時は、内視鏡的に切除することもあります。

目や耳だけでなく、声にも老化現象は起こってきます。声帯粘膜が萎縮して発声時に両側声帯が完全に閉じずに隙間が生じ、そこに喉頭分泌腺の機能低下が加わって息漏れした声嗄れ(気息性嗄声)を呈します。この場合、発声を控えていると余計に声帯萎縮が高度となり、声嗄れが悪化しますから、疲れない程度に腹から声を出す訓練を日に何度か行い、萎縮の進行を防ぎます。また高齢者では、鼻の加湿機能も低下するので家庭用の吸入器で鼻やのどに湿り気を与えることも声の調子には大切です。

極めて稀には、声帯がんや声帯麻痺などもあります。声帯麻痺は脳梗塞頭頸部がん肺がん食道がんなどが原因で起こることもあります。1ヶ月以上、声嗄れが続くようなら耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。


リストマーク このページの先頭に戻る

のどが痛くて飲み込めない

溶血連鎖球菌(溶レン菌)などによる急性咽頭扁桃炎が重症化すると、痛くて食事が摂れず内服治療ができない場合は、入院して点滴治療を要します。扁桃の周囲へ炎症が波及して膿が貯まってパンパンに腫れると(扁桃周囲膿瘍)水分も摂れなくなります。局所麻酔下に穿刺・切開して排膿できれば、その晩には食事が摂れるようになり、入院せずに済みます。

一般の咽頭診察で炎症所見が目立たない割には嚥下痛が強い場合は、のどの奥の喉頭蓋がインフルエンザ菌(Hib)などによる蜂窩織炎で充血、むくみ、腫大した急性喉頭蓋炎が疑われるので、間接喉頭鏡や経鼻ビデオスコープ検査を要します。腫大が進行すると嚥下だけでなく、発声、呼吸も困難になりますので、抗菌薬やステロイドの点滴投与、入院管理が必要になります。

乳幼児期に感染した水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化して喉頭帯状疱疹を発症すると、下図左のように腫大、疱疹が嚥下痛の原因になります。このケースは、抗ウイルス薬内服5日後には痛みがとれ、1週間後には右図のようにきれいに治りました。

喉頭帯状疱疹 矢印 正常化した喉頭
喉頭蓋の腫大、粘膜疹正常化した喉頭蓋

重症化する前に、早めに耳鼻咽喉科で診察を受けてください。


リストマーク このページの先頭に戻る

呼吸が苦しい

生まれてすぐ、とくに未熟児で喉頭や気管・気管支・肺の発育不全のため呼吸がうまくできず、新生児集中治療室(NICU)で呼吸管理を受けることがあります。その際、NICUの小児科医より依頼されて、細径の内視鏡で上気道の異常の有無を検査します。

もう少し大きくなって乳幼児期(1〜6歳)になると、主にインフルエンザ菌による急性声門下喉頭炎(仮性クループ)を発症することがあります。声門下の腫れやむくみによる狭窄のため犬の遠吠え様の咳が出て息が吸えなくなるので、入院して適切な呼吸管理下に治療を受けなければなりません。診断が遅れると命にかかわるため、小児科医や耳鼻咽喉科医の迅速な判断が要求されます。

学童期以降は、喉頭炎を発症しても喉頭内腔が広いため、呼吸困難になることはありません。成人では急性喉頭蓋炎が問題になります。これは声門上で喉頭蓋が炎症を起こし、赤く腫れ上がって痛くて唾液も飲み込めなくなります。喉頭蓋の腫れがのどを閉塞して呼吸困難となります。そうなる前に適切な治療を施すことによって、入院せずに済みます。 急性喉頭蓋炎
腫脹した喉頭蓋

これら乳幼児の仮性クループ、成人の急性喉頭蓋炎と同様、緊急を要するものに喘息発作や喉頭異物、それもモチ異物があります。毎年、年末・年始に全国各地でモチがのどにつまって窒息死した老人の記事を見ます。ほとんどは噛み砕いたり飲み込んだりする機能が低下した高齢者や脳梗塞の既往がある方です。これを防ぐため、病棟では正月でもモチを使った料理は出ません。どうしても正月気分を味わいたい方は、一口サイズにちぎって食べるしかありません。

交通事故でハンドルに前頸部を強打して喉頭腔がつぶれたり、神経を断裂するような喉頭外傷では呼吸や発声が困難になることがあります。一時的にでも気道が確保されれば、後で変形・狭窄した気道を再建することができます。

喉頭がんで呼吸が苦しいとなると、かなり進行した状態です。声帯にできた病変は早くから声の異常に気付きますが、それ以外の部位にできた病変は気付き難く発見も遅れます。のどの違和感がいつまでも続くときは、耳鼻咽喉科で検査を受けましょう。 声門上喉頭がん
声門を閉塞した腫瘍

リストマーク このページの先頭に戻る

のどに物がつかえる

食事と関係なく、常にのどに何かがつかえている感じと、食事の時に食べ物がのどにつかえて飲み込みにくい。この2つを区別しなくてはなりません。

前者を”咽喉頭異常感症”といいます。これは年中のどに違和感があり、何かに集中しているときは忘れているという特徴があります。原因としては、のどの異常、のど以外からの間接的要因、ストレスなど精神的原因が考えられます。

喉頭肉芽腫

のどの異常は、咽頭や喉頭の慢性の炎症が原因と思われる舌根扁桃の肥大と喉頭蓋の変形が多く見られ、それ以外はほとんど異常を認めません。ごく稀に、右図のような喉頭肉芽腫などが偶然見つかることもあります。

のど以外の要因としては、頚椎の変形慢性甲状腺炎逆流性食道炎/胃食道逆流症がのどの異物感の間接的な原因となっていることがあります。

次に、食事の時に食べ物がのどにつかえて飲み込みにくい場合、脳梗塞による咽頭麻痺加齢による飲み込む力の低下などの機能性のものと、咽頭・食道がん逆流性食道炎などによる器質性のものがあります。

右は2年前から食事がつかえるという40歳代の女性で、食道胃接合部に全周性狭窄を認めた下部食道リング (Schatzki's ring)。内視鏡による食道バルーン拡張の予定。 下部食道リング

いずれにしても、耳鼻咽喉科や気管食道科、消化器科の専門の医師の診察・検査を受ける必要があります。


リストマーク このページの先頭に戻る