COPDの定義
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示すが、これらの症状に乏しいこともある。

1.COPDを疑う特徴・・・疑うことが大切

  1. 喫煙歴あり(特に40歳以上)
  2. 咳(特に湿性)、痰、喘鳴
  3. 労作時(階段や坂道の登り、など)の息切れ
  4. 風邪(上気道)症状時のb.またはc.(風邪で顕在化することあり)
  5. 風邪(上気道)症状を繰り返す、または回復に時間がかかる
  6. 下記疾患(COPDに多いへ併存症)患者
    心血管系疾患、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、など

2.COPDの診断

  1. 長期の喫煙歴などの暴露因子があること
  2. 気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーでFEV1/FVC が70%未満であること
  3. 他の気流閉塞を来しうる疾患を除外すること

3.COPDの病型注)

  1. 気腫型COPD:気腫性病変が優位
  2. 非気腫型COPD:末梢気道病変が優位
注) COPDの病型は、この他にも慢性気管支炎症状、増悪
の頻度、気流閉塞の可逆性、息切れ、体重減少、呼吸
不全、肺高血圧などの有無や重症度によってさまざま
に分けられる。

4.COPDの病期分類

病期定義
T期軽度の気流閉塞%FEV1≥80%
U期中等度の気流閉塞50%≤%FEV1<80%
V期高度の気流閉塞30%≤%FEV1<50%
W期きわめて高度の気流閉塞%FEV1<30%

気管支拡張薬投与後のFEV1/FVC 70%未満が必須条件


5.COPDにみられる所見

a.臨床所見

呼吸困難(息切れ)、慢性の咳・痰、喘鳴、体重減少、食欲不振

よくみられるもの、すべてみられるわけではない。これらが全くないこともある。


b.身体所見

呼気延長、口すぼめ呼吸、樽状胸郭、胸鎖乳突筋の肥大、チアノーゼ、ばち指、聴診上の呼吸音の減弱

これらは病期がある程度進行してからみられることが多い。


c.臨床検査・画像診断におけるCOPDの所見

      
1)胸部X線:肺野の透過性亢進、横隔膜の平低化 spacer 2) 胸部CT:気腫性変化、気道壁の肥厚
copdの胸部XP copdの胸部CT
3) 呼吸機能検査
@スパイログラム:閉塞性換気障害(FEV1/FVCの低下)
A気道可逆性(気管支拡張薬吸入後のFEV1増加)
B動脈血ガス分析・パルスオキシメータ:低酸素血症
Cその他:肺拡散能力の低下、肺気量の低下 (過膨張)、静肺コンプライアンス高値、など
4) 運動耐容能の低下、身体活動性の低下
@ 運動の能力は呼吸困難によって制限されるため、その指標である運動耐容能は低下する
A 身体活動性は1日平均歩数などを指標とする。一般に健常者より低下している

6.COPDの治療管理

a.管理目標

T.現状の改善
@症状およびQOLの改善
A運動耐容能と身体活動性の向上および維持
U.将来のリスクの低減
@増悪の予防
A疾患進行の抑制および健康寿命の延長
*: 現状および将来リスクに影響を及ぼす全身併存症および肺合併症の診断・評価・治療と発症の抑制も並行する。

b.管理計画

1)重症度および病態の評価と経過観察
重症度はCOPD病期、息切れの度合い、増悪歴の有無などから総合的に判断する。全身併存症や肺合併症の診断・管理を行う。
2)危険因子の回避
タバコ煙などの有害物質からの回避、感染予防を行う (手洗い、口腔ケア、ワクチンなど)
3)長期管理
薬物療法と非薬物療法を行う。

c.安定期の管理

安定期の管理では、原因物質暴露からの回避、薬物療法および非薬物療法を組み合わせる
(図1)。管理目標を達成するために、重症度にあわせてエビデンスに基づいた治療を選択する。

COPD重症度別管理

図1 安定期 COPD の重症度に応じた管理

また、肺合併症や全身併存症の評価や治療を並行する。さらに治療介入や変更後に重症度を再評価することで、管理目標の達成および個別化最適医療の実現を目指すように努める。図2に安定期管理の概略をアルゴリズムで示す。

COPD管理アルゴリズムcopd_algo.gif

図2 安定期 COPD 管理のアルゴリズム

(COPD 診断と治療のためのガイドライン[第6版]2022より引用,一部改変)

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