定義、病態生理、診断、重症度分類

             
定    義 喘息は、気道の慢性炎症を特徴とし、発作性に起こる気道狭窄によって、咳嗽、呼気性喘鳴、呼吸困難を繰り返す疾患です。
病態生理 気道の慢性炎症の結果、気道過敏性亢進を生じ、これにさまざまな誘発・悪化因子が作用すると気管支平滑筋の収縮、気道粘膜の浮腫、気道分泌亢進による気流制限が引き起こされて喘息症状に至る。また器質的変化である気道のリモデリングによって気道過敏性はさらに亢進し、気流制限も起こしやすくなります。
診    断 反復する発作性の喘鳴や呼吸困難、可逆的な気流制限、気道過敏性亢進を確認することに加えて、喘息以外の疾患を除外します。(図1)
フローチャート
図1 喘息診断のフローチャート
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表1 鑑別を要する疾患

先天異常、発達異常に基づく喘鳴その他
大血管の解剖学的異常過敏性肺炎
先天性心疾患気管支内異物
気道の解剖学的異常心因性咳嗽
喉頭、気管、気管支軟化症声帯機能不全(vocal cord dysfunction,VCD)
繊毛運動機能異常気管、気管支の圧迫(腫瘍など)
感染症に基づく喘鳴うっ血性心不全
鼻炎、副鼻腔炎アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
クループ嚢胞性線維症
気管支炎サルコイドーシス
急性細気管支炎肺塞栓症
肺炎閉塞性細気管支炎
気管支拡張症胃食道逆流症
肺結核

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重症度分類 喘息の重症度は、ある期間にどの程度の喘息症状が、どのくらいの頻度で起こったかを指標にして判定します。
治療開始前の重症度は、間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型と分類します。
すでに治療が進められている場合は治療薬によって症状が軽減するため、治療薬の効果を加味しての (治療ステップを考慮した) 重症度を「真の重症度」とします。
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表2 小児喘息の重症度分類

現在の治療ステップを考慮した重症度
(真の重症度)
症状のみによる重症度
(見かけ上の重症度)
治療
ステップ1
治療
ステップ2
治療
ステップ3
治療
ステップ4
間欠型
・年に数回、季節性に咳嗽、軽度呼気性喘鳴が出現する
・時に呼吸困難を伴うこともあるが、短時間作用性β2刺激
薬の頓用で短期間で症状改善し、持続しない
間欠型軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
軽症持続型
・咳嗽、軽度呼気性喘鳴が1回/月以上、1回/週未満
・時に呼吸困難を伴うが、持続は短く、日常生活が障害さ
れることは少ない
軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
中等症持続型
・咳嗽、軽度呼気性喘鳴が1回/週以上。毎日は持続しない
・時に中・大発作となり日常生活が障害されることがある
中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型
重症持続型
・咳嗽、呼気性喘鳴が毎日持続する
・週に1〜2回、中・大発作となり日常生活や睡眠が障害
される
重症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型

長期管理に関する薬物療法

長期管理の目標は、基本病態である気道炎症を抑制し、無症状の維持、呼吸機能や気道過敏性の正常化、QOLの改善を図り、最終的には寛解・治癒を目指します。

喘息が未治療の場合には、急性増悪の頻度と症状の程度により表3を参考にして重症度を判定し、重症度に応じた治療ステップの基本治療から治療を開始します。

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表3 長期管理薬未使用患者の重症度評価と治療ステップの目安

重症度間欠型軽症持続型中等症持続型重症持続型
症状の
頻度と程度
軽い症状 (数回/年)
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短時間作用性β2刺
激薬頓用で短期間に
改善する
1回/月以上
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時に呼吸困難。日
常生活障害は少な
1回/週以上
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時に中・大発作と
なり日常生活が障
害される
毎日
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週に1〜2回中・
大発作となり日常
生活が障害される
開始する
治療ステップ
治療ステップ1治療ステップ2治療ステップ3治療ステップ4
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一方、すでに長期管理薬の投与が開始されている場合は、コントロール状態ならびに喘息の増悪因子を
評価し、良好なコントロールを維持できるように長期管理を行います。


乳幼児 (5歳以下) と6〜15歳の2つの年齢に分けて長期管理プランを選択します。

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図2 小児喘息の長期管理プラン (5歳以下)

長期管理プラン(5歳以下)

LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬 ICS:吸入ステロイド薬

図3 小児喘息の長期管理プラン (6〜15歳)

長期管理プラン(6〜15歳)

LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬 ICS:吸入ステロイド薬

ICS/LABA:吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2刺激薬配合剤

急性増悪 (発作) への対応

急性増悪 (発作) への対応には「家庭での対応」と「医療機関での対応」があります。

家庭での対応

図4 小児の「強い喘息発作のサイン」と家庭での対応

(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020より引用)

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