のみ込み難いと感じたら

まずかかりつけ医に相談しましょう。飲み込みにくい疾患、たとえば脳血管 (脳梗塞など)、脳・神経 (脊髄小脳変性症など)、神経・筋 (筋萎縮性側索硬化症など)、口腔・咽頭・喉頭 (咽頭がんなど)、食道・胃 (逆流性食道炎など)、全身 (膠原病など) の異常が無いかどうか内科や耳鼻咽喉科の専門家に紹介してくれます。

気管食道

耳鼻咽喉科では内視鏡を用いて咽頭・喉頭の腫瘍や麻痺の有無をみます。また、のみ込み時の反射 (嚥下反射) が保たれているか、一回で全部が食道にのみ込まれず、咽頭に残っていないか (咽頭クリアランス低下)、気道に流れ込んでいないか(誤嚥の有無) を指標に嚥下機能を評価します (嚥下内視鏡検査)。


嚥下内視鏡検査 (VS)・・・内視鏡を用いた嚥下機能検査
1) 検査食を用いない状態での観察
鼻咽腔閉鎖、咽頭・喉頭の運動、唾液貯留や食物残留、咽頭・喉頭の感覚
クリアランス正常 唾液貯留
咽頭クリアランス正常 唾液貯留あり
2) 着色水を用いた嚥下状態の観察
早期咽頭流入、嚥下反射惹起のタイミング、咽頭残留、喉頭流入・誤嚥
3) 検査食を用いた観察
必要に応じて実食してもらう
早期咽頭流入、嚥下反射の惹起遅延、咽頭残留、喉頭流入・誤嚥が観察された場合には、嚥下機能の異常が示唆される。

嚥下障害診療アルゴリズム
嚥下障害診療アルゴリズム ※簡易検査:唾液、水、プリンやゼリーのような半固形物の嚥下状況をテストする

嚥下内視鏡検査を主体とする諸検査の結果を総合的に判断し、上記のように対応する。

(嚥下障害診療ガイドライン 2018年版、日本耳鼻咽喉科学会)

保存的治療、外科的治療 >>


  • ひとくちメモ

近年、高齢化社会が進み、脳血管障害で急性期の治療後、認知症や構音障害、嚥下障害、肢体不自由など後遺症で自宅療養を余儀なくされている高齢者が増加しています。このようなお年寄りの嚥下障害に対する介護、機能訓練に歯科医が積極的に関わろうとしており、たいへんよいことだと思います。口腔内清拭や冷刺激による咽頭反射の惹起、ものを噛むための補綴、舌・下顎運動の機能回復は嚥下の準備期、口腔〜咽頭期へのスムーズな運動のためには重要なファーストステップだからです。

第2の準備段階として呼吸と発声が重要です。たとえば、気管切開がなされてカニューレを通して呼吸し、発声できない状態での嚥下訓練は困難です。この場合、全身状態の回復を待って、カフ付きカニューレをスピーチカニューレやボタン型カニューレに換えて栓をして、本来の喉頭を経由した鼻呼吸での十分な発声訓練、咳と腹圧で痰を喀出 (呼吸訓練) できるようになって初めて嚥下訓練が可能となります。

嚥下訓練は飲食物なしで呼吸と嚥下と咳を組み合わせた仮想訓練と、実際にバナナや飯粒での嚥下訓練があります。食物での実地訓練の際の誤嚥による肺炎は、致命的となる危険があり、胸部レントゲン撮影と気管支鏡で吸引ができる施設でやることが原則です。したがって嚥下障害患者の診療は、必然的に家族、介護士、看護師、放射線技師、言語聴覚士、歯科医、耳鼻科医、内科医、リハビリテーション医のチーム医療となります。

嚥下性肺疾患 >>


  • 介護施設や在宅での食事(経口摂取)指導

食べやすい形態 (軟食、肉や野菜などは細切り、増粘剤でトロミをつける等) にして、飲み込みやすくかつむせにくい体位 (座位または背もたれを約30°後ろに倒す、嚥下時に顎を引く、頸部を左右どちらかに回旋1)等) を工夫してみよう。飲み込むたびに飲みきれなくて口内やのどに残っていないか確かめながら2)、一口ずつ食事を進めてみましょう。

※1) 咽頭麻痺がある場合、麻痺側に頸部を45°回旋して麻痺した咽頭腔を狭くする。麻痺側の肩下に枕を入れて健側が下になるようにして、麻痺側をなるべく使わないようにする。
※2) 話しかけて発声してもらい、ウガイ時のような含み声になっていなければのどに残っていない。