用語解説
胃食道逆流症(GERD)
胃食道逆流(gastroesophageal reflux : GER) により引き起こされる食道粘膜障害と煩わしい症状のいずれかまたは両者を引き起こす疾患であり、食道粘膜障害を有する「逆流性食道炎」と症状のみを認める「非びらん性逆流症(non-erosive reflux disease : NERD)」に分類される。
GERDの病態、定義、診断
病 態 | : | 胃酸の胃食道逆流 (GER) による食道内の過剰な胃酸暴露が食道粘膜障害の主な原因である |
定 義 | : | GERDは「胃内容物の逆流によって引き起こされる症状や合併症を起こした状態」 |
診 断 | : | GERDの定型的食道症状は、胸やけ・呑酸(どんさん)※1 である。GERによって非定型的食道症状(胸痛や食道外症状)※2 が出現することがある |
※1 | 胸やけは、胸骨後部の焼けるような感覚であり、また呑酸は、逆流した胃内容物が口腔内や下咽頭まで上がることを認知すること、と定義される |
※2 | 食道における症状としては、狭心症に類似した「非心臓性胸痛 (non-cardiac chest pain : NCCP)」がある。一方、食道外症状は、GERDと関連した症状として「喉頭炎」「咳嗽」「喘息」「歯の酸蝕症」、またGERDとの関連が推測される症状として「咽頭炎」「副鼻腔炎」「再発性中耳炎」「特発性肺線維症」があげられている |
図には GERD 診療のフローチャートを示す
胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021より引用、一部改変
GERDの治療
BQ 4-2 | : | 生活習慣の改善・変更は GERD の治療に有効である。すなわち肥満者は減量、喫煙者は禁煙、夜間症状発現者は遅い夕食の回避、就寝時の頭位挙上が有効 |
BQ 4-3 | : | 逆流性食道炎、NERD の治療に酸分泌抑制薬※1が有用 |
BQ 4-4 | : | アルギン酸塩、制酸薬※2は GERD の一次的症状改善に効果がある |
BQ 4-5 | : | 消化管運動機能改善薬、漢方薬※3は PPI との併用により症状改善効果が得られる |
※1 | 酸分泌抑制薬にはプロトンポンプ阻害薬 (PPI)(P-CABを含む)、ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬などがある |
※2 | アルギン酸塩はアルロイドG、制酸薬には炭酸水素ナトリウムなどがある |
※3 | 消化管運動機能改善薬にはアコチアミド(アコファイド®)、漢方薬には六君子湯、半夏瀉心湯などがある |
CQ 4-1 | : | 軽症逆流性食道炎の初期治療として、PPI と P-CAB※4 はいずれも第一選択薬として使用することを推奨する |
CQ 4-2 | : | 重症逆流性食道炎の初期治療として、ボノプラザン 20mg/日を4週間投与することを提案する |
CQ 4-3 | : | 常用量の PPI の1日1回投与で効果が不十分な場合には PPI の倍量・1日2回投与、ボノプラザン 20mg/日への変更を推奨する |
CQ 4-4 | : | 軽症逆流性食道炎の長期維持療法に PPI を推奨する |
CQ 4-5 | : | 重症逆流性食道炎の長期管理については、内視鏡的再燃率の低さからボノプラザン 10mg/日を提案する |
CQ 4-6 | : | GERD の維持療法の安全性は高いが、長期投与に際しては注意深い観察が必要である。適切な適応症例においては、投与期間について明確な制限は存在しないが、必要に応じた最小限の用量で使用することを提言する |
※4 | P-CAB (カリウムイオン競合型アシッドブロッカー) とは、ボノプラザン (タケキャブ®) |
(参考 | : | 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021.日本消化器病学会 編 ,南江堂 ; 2021) |