長年、耳鳴りで苦しんでおられる方、耳鳴りは治らないとあきらめている人は多いと思います。耳鳴りを完全に消すことは難しいですが、耳鳴りの性状・程度や原因を調べる検査をして、治療や対処によって気にならなくすることは可能です。

原 因

耳鳴りの原因には、中耳、内耳、聴こえの神経など耳に異常がある場合と、動脈硬化や狭窄、脳変性疾患、うつ・不安など耳以外の原因もあります。

原因不明の突発性難聴など急性内耳障害に伴う耳鳴りは、治療により聴こえの改善とともに耳鳴りも治ることもあります。同様に内耳性耳鳴りの主な原因疾患には騒音性難聴、老人性難聴、メニエール病などがあります。その他に薬剤性耳鳴りや糖尿病に伴う感音性難聴などもあります。ごく稀に一側性の耳鳴りや難聴の場合、中枢性の器質的異常として聴神経腫瘍があります。

検 査

まず耳の異常がないかをみるために診察、聴力検査をします。次に耳鳴りの性状や大きさ・高さなどを調べます。一側性の耳鳴り・難聴がある場合、聴神経腫瘍や血管障害の有無をみるためにMRIなどの画像検査をします。

耳鳴りの治療

検査の結果、耳鳴りの原因を理解し、必要に応じて音響療法を組み合わせる(Tinnitus Retraining Therapy:TRT)ことにより、耳鳴りに慣れていただきます。その結果、苦痛や生活上の支障が軽減し、耳鳴りがあっても気にならずに通常の日常生活ができるようになれば目的達成です。

1.過敏を抑える

騒音性難聴、老人性難聴、メニエール病や薬剤性、糖尿病性の内耳性難聴(蝸牛障害)があると、聴こえの神経(蝸牛神経)や大脳聴覚領野は過敏となり、音が大きく響いて聴こえたりします。この神経や脳の過敏を抑えるために抗うつ薬や抗てんかん薬を使うこともあります。この過敏や不安・うつが強くてコントロール不能のときは、心療内科や精神神経科に紹介し、治療していただくこともあります。

2.音響療法

耳鳴りを強く感じるような雑音の少ない静かな環境を作らないよう常に音を流して耳鳴りへの意識の集中を分散させ、耳鳴りに慣れてもらいます。

1)難聴あり補聴器装用で周囲の環境音を多く入れることにより、弱い耳鳴りは軽減することが期待できる
2)難聴なし検査で測定した耳鳴りの大きさを超えない程度で、長時間聞いても不快に感じない音(FMラジオの局間ノイズや自然音が収録されたCDなど)を、とくに耳鳴りが気になる静かな環境にいる時に聞くようにする

3.漢方治療

とくに高血圧、肩こり、頭痛、めまい、のぼせなどに伴う耳鳴りや老人性難聴があり冷え、腰下肢痛、夜間頻尿を伴う耳鳴りには漢方薬が有効な場合があります。薬が合えば、耳鳴り以外の諸症状も改善し、処方継続を希望されて長く内服されている方も多くいます。

以上、長年の耳鳴りが完全に消えることはないですが、時間の経過とともに徐々に慣れて、苦痛は必ず軽減されます。つらい耳鳴りでお困りの方は、是非お近くの耳鼻咽喉科で耳鳴りの検査と原因を調べてもらい、適切な対症療法で何とか乗り切っていきましょう。


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