頭痛の分類、診断

頭痛の分類および診断は、国際頭痛分類第3版 (ICHD-3)に準拠して分類し、診断します。

表1 ICHD-3の頭痛分類

第1部:一次性頭痛
1.「片頭痛」
2.「緊張型頭痛」
3.「三叉神経・自律神経性頭痛」
4.「その他の一次性頭痛疾患」
第2部:二次性頭痛
5.「頭頸部外傷・傷害による頭痛」
6.「頭頚部血管障害による頭痛」
7.「非血管性頭蓋内疾患による頭痛」
8.「物質またはその離脱による頭痛」
9.「感染症による頭痛」
10.「ホメオスターシス障害による頭痛」
11.「頭蓋内、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口
spacerあるいはその他の顔面・頸部の構成組織の
spacer障害による頭痛または顔面痛」
12.「精神疾患による頭痛」
第3部: 有痛性脳神経ニューロパチー他の顔面痛
およびその他の頭痛
13.「脳神経の有痛性病変およびその他の顔面痛」
14.「その他の頭痛性疾患」

頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。一次性頭痛は片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛 (三叉神経・自律神経性頭痛) などの頭痛自体が疾患の頭痛です


二次性頭痛は生命に危険な疾患であるくも膜下出血や脳梗塞、髄膜炎などが原因で二次的に起こる頭痛です

頭痛診断へのアプローチ

頭痛の診断は、発症形式により急を要するか、のんびりでよいかに分かれます(図1)。発症形式が突然、急性、亜急性の順に急を要し、これらは二次性頭痛であることが多い。それに比し慢性の場合は比較的余裕があり、一次性頭痛であることが多い。

頭痛患者のスクリーニング

図1. 頭痛の診断フローチャート

(辰元宗人:Med Pract 2021;38:1836-1842より引用)


発症形式が突然、急性、亜急性の場合は、まず危険な頭痛かどうか判断するために、簡易診断アルゴリズムを用いる(図2)。 危険な頭痛の簡易診断アルゴリズム
簡易診断アルゴリズムで危険な頭痛の可能性がある場合、急性頭痛の二次的原因の疾患を中心に迅速な診断を進める。
図2.危険な頭痛の簡易診断アルゴリズム
(Dowson AJ,et al:Int J Clin Pract 2003;58:493-507より改変し転載)

片頭痛 ― 急性期治療

片頭痛急性期の治療は、薬物療法が中心となります。主な治療薬として@アセトアミノフェン A非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) Bトリプタン Cエルゴタミン D制吐薬があります。軽度〜中等度の頭痛にはNSAIDsを使用します。中等度〜重度の頭痛、または軽度〜中等度の頭痛でも過去にNSAIDsの効果がなかった場合にはトリプタンが推奨されます。それでも効果が不十分な場合はNSAIDsとトリプタンの併用を考慮します。いずれの場合でも制吐薬の併用は有用です。

表2 急性期治療薬の薬効 group

Group 1
(有効)
Group2
(ある程度有効)
Group3
(経験的に有効)
Group4
(有効,副作用に注意)
Group5
(無効)
トリプタン
ジタン
gepant
制吐薬
アセトアミノフェン
非ステロイド性抗炎症薬
その他
ステロイド 抗不安薬,抗精神病薬
鎮静麻酔薬,制吐薬
エルゴタミン
その他

トリプタンが無効の人や血管収縮作用のため使用できないこともあるため、血管収縮作用をもたない選択的 5-HT1F作動薬 (ジタン) や CGRP受容体拮抗薬 (gepant) の開発が進められています。

(頭痛の診療ガイドライン2021より引用一部改変)

ジタンであるラスミジタン (レイボー®) が2022年6月に発売され、脳心血管系合併症を有する片頭痛患者への恩恵となることが期待されています。

(古和久典:新たな片頭痛治療薬.日医雑誌2022;151:1581-1584.より引用一部改変)


急性期治療薬の主役であるトリプタンは、日本で現在5種類が使用できます (表3)。発作のパターンや副作用も考慮してトリプタンを選択し使い分けます。

表3 トリプタンの種類と投与量

製剤名 剤型 初回投与量
(mg)
追加投与量
(mg)
最低投与間隔
(時間)
最大1日投与量
(mg)
スマトリプタン (イミグラン®)
点鼻薬
注射液
50
20
50
20


200
40
ゾルミトリプタン(ゾーミック®)
RM
2.5
2.5
2.5
2.5

10
10
エレトリプタン (レルパックス®) 20 20 40
リザトリプタン (マクサルト®,
 マクサルトRPD®)

RPD
10
10
10
10

20
20
ナラトリプタン (アマージ®) 2.5 2.5

スマトリプタンには錠剤だけでなく点鼻薬や注射液もあり、頭痛が始ってからできるだけ早期に使用することが重要です。

(柴田 護:片頭痛の病態生理と治療.日医雑誌 ;2022;151:1573-1576.より引用一部改変)

片頭痛 ― 予防療法

慢性片頭痛の治療は予防療法が中心となります。適切な予防薬による治療を行い、急性期治療薬の使用は最小限にとどめます。

片頭痛の予防療法に使用される薬剤には表4のような薬剤があります。

表4 片頭痛の予防療法に使用される薬剤

薬 剤 推奨の
強さ
エビデンスの
確実性
副作用 薬効の
group
推奨用量
抗 CGRP 抗体
ガルカネズマブ 強い A まれ 1(有効) 120mg/月
(初回のみ240mg)
フレマネズマブ 強い A まれ 1(有効) 225mg/4週または
675mg/12週
抗 CGRP 受容体抗体
エレヌマブ 強い A まれ 1(有効) 70mg/4週
抗てんかん薬
バルプロ酸 強い A 時々〜頻繁 1(有効) 400〜600mg/日
トピラマート 強い A 時々〜頻繁 1(有効) 50〜200mg/日
抗うつ薬
アミトリプチリン 強い B 頻繁 1(有効) 10〜60mg/日
β遮断薬
プロプラノロール 強い A まれ〜時々 1(有効) 20〜60mg/日
Ca拮抗薬
ロメリジン 弱い B まれ 2(ある程度有効) 10〜20mg/日
ベラパミル 弱い B まれ〜時々 2(ある程度有効) 80〜240mg/日
ARB/ACE 阻害薬
カンデサルタン 弱い B まれ 2(ある程度有効) 8〜12mg/日
リシノプリル 弱い B 時々 2(ある程度有効) 5〜20mg/日
その他
ジメトチアジン 弱い C まれ 2(ある程度有効)

誘因を避け、慢性化した原因について探索し、共存症がある場合にはその治療も同時に行います。非薬物療法も同時に行うことを考慮します。

(頭痛の診療ガイドライン2021より引用一部改変)


緊張型頭痛

緊張型頭痛は、反復性と慢性に分けられます。反復性緊張型頭痛は、一般的に両側性で性状は圧迫感または締めつけ感、強さは軽〜中等度で、数十分〜数日間持続する頭痛です。頭痛の頻度が平均して1か月に1回未満で通常治療の対象とならない稀発反復性緊張型頭痛と、平均して1か月に1〜14日の頻発反復性緊張型頭痛に分類されます。

慢性緊張型頭痛は、頻発反復性緊張型頭痛から進展した疾患で、3か月を超えて平均して1か月に15日以上連日または非常に頻繁に発現します。一般的に両側性で性状は圧迫感または締めつけ感、強さは軽〜中等度で、数時間〜数日間、または絶え間なく持続し、高度の傷害を引き起こす深刻な疾患です。

頻発反復性緊張型頭痛と慢性緊張型頭痛で、日常生活に支障をきたす場合には治療 (急性期治療、予防療法) が必要です。急性期治療の主体はアセトアミノフェンあるいは非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) です。この場合、1週間に2〜3日以上の使用を避けて薬剤の使用過多による頭痛をきたさないよう注意が必要です。

表5 緊張型頭痛の急性期治療に使用される代表的な薬剤

薬剤名 一般名 エビデンスの
確実性
推奨用量
アセトアミノフェン
NSAIDs
@アセトアミノフェン
Aアスピリン・ダイアルミネート配合
Bイブプロフェン
Cナプロキセン
Dジクロフェナク*
A
A
A
A
A
500〜1,000mg/回
500〜1,000mg/回
100〜200mg/回
100〜300mg/回
12.5〜50mg/回
複合鎮痛剤 カフェイン配合* B 65〜200mg 頓用
筋弛緩薬 チザニジン* B 3〜6mg/日
選択的 COX-2 阻害薬 セレコキシブ C 100〜200mg/日

*保険診療で適応外使用が認められている. @〜Dはすべて頓用で使用.

(頭痛の診療ガイドライン2021より引用一部改変)


薬剤の使用過多による頭痛 (MOH : Medication Overuse Headacke)

MOH は以前から一次性頭痛をもつ患者さんが、薬剤の使用過多に関連して新しいタイプの頭痛が発症した状態、または以前からある頭痛が著明に悪化した状態です。

MOH の治療の原則は、@原因薬剤の中止、A薬剤中止後に起こる頭痛への対処、B予防薬投与の3つです。慢性片頭痛で薬剤使用過多の患者さんではCGRP関連薬剤の有効性が報告されています。離脱方法は外来で、原因薬剤の中止をお勧めします。重症例では入院を要する場合もあります。

MOH は1年以内に、約3割が再発します。離脱後も定期的に再診し、頭痛ダイアリーを用いてトリプタン、鎮痛薬の使用頻度を確認します。

(頭痛の診療ガイドライン2021より引用一部改変)


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