1. | 食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体に とって不利益な症状が惹起される現象」と定義する。 |
2. | 食物アレルギーに関与するアレルゲンは食物以外もあり、その侵入経路もさまざまである。 |
3. | 食物アレルギーは、免疫学的機序によって大きくIgE依存性反応と非IgE依存性反応に分けられる。また、アレルゲン暴露から症状誘発の時間経過によって、即時型反応と非即時型反応に分けられる。IgE依存性反応の多くは即時型反応を呈するが、両者は必ずしも一致しない。 |
4. | 食物アレルギーによって、皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器などのさまざまな臓器に症状が誘発される。 |
5. | アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過敏反応」と定義する。アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う 場合を、アナフィラキシーショックという。 |
(食物アレルギー診療ガイドライン2022ダイジェスト版より)
町内(6小・2中)児童・生徒に対する質問票による調査(保護者記入)から147名、6.1%と増加傾向にある。
食物アレルギーに関する調査(2014年4月)
小学校(6校) | 中学校(2校) | 合 計 | |
1 食物アレルギーの児童生徒数 | 103 | 44 | 147 |
2 給食が特別食 | 16 | 3 | 19 |
3 アナフィラキシー発症の状況 | 7 | 5 | 12 |
4 学校管理指導表提出人数 | 13 | 4 | 17 |
5 エピペンの常時所持 | 6 | 0 | 6 |
(資料提供:高根沢町立阿久津小学校 養護教諭 石塚先生)
1. | 特にアレルギーを起こしやすいとされる食品のうち、発症数、重篤度から考えて表示する必要が高いものとして表示が義務化された7品目−特定原材料(省令で定められたもの) |
鶏卵、乳製品、小麦、えび、かに | 症例数が多いもの |
そば、落花生 | 症状が重篤であり、生命に関わるため特に留意が必要なもの |
2. | 可能な限り表示することが推奨された20品目−特定原材料に準ずるもの(通知で定められたもの) |
あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン |
(食品衛生の窓 東京都の食品安全情報サイト 東京都福祉保健局HPより)
3. | 食物アレルギーの原因食物 |
(今井孝成,ほか.アレルギー,2016:65;942-6より引用)
小児期の即時型食物アレルギーの主要原因食物は鶏卵、牛乳、小麦である。
1. | 食物アレルギーは、特定の食物摂取によりアレルギー症状が誘発され、それが特異的IgE抗体など免疫学的機序を介する可能性を確認することによって診断される。 |
2. | 乳児のアトピー性皮膚炎では、まずスキンケア指導などで湿疹を改善させた上で、食物アレルギーの関与について検索を進める。 |
3. | 食物アレルゲンの摂取と症状誘発の関連を、詳細な問診によって明らかにすることが診断につながる。 |
4. | 免疫学的検査には特異的IgE抗体検査、皮膚プリックテストなどがあるが、感作の証明だけで除去を安易に指導しないようにする。 |
5. | 特異的IgE抗体検査は、検査法により測定結果や評価法が異なることに留意する。アレルゲンコンポーネント特異的IgE抗体を測定することにより、診断精度を上げることができる。 |
6. | 特異的IgE抗体価と症状誘発の確率の関係を示したさまざまなプロバビリティカーブが報告されている。 |
保険適用されている食物アレルゲンコンポーネント特異的IgE検査
粗抗原に加え、アレルゲンコンポーネント特異的IgE 抗体の測定により、精度の高い診断が可能となる
粗抗原 | コンポーネント | 測定意義 |
---|---|---|
卵白 | Gal d 1 (オボムコイド) | 卵白が強陽性でもオボムコイドが陰性あるいは弱陽性なら、加熱鶏卵を摂取できる可能性高い |
牛乳 | Bos d 4 (α-ラクトアルブミン) Bos d 5 (β-ラクトグロブリン) Bos d 8 (カゼイン) |
|
小麦 | Tri a 19 (ω-5グリアジン) | 陽性だと小麦アレルギーの確率高い。陰性の場合、経口負荷試験 (OFC)による最終確認を要する |
大豆 | Gly m 4 (PR-10) | |
ピーナッツ | Ara h 2 (2Sアルブミン) | ピーナッツアレルギーで有意に高値。診断精度が向上し、OFCしなくて済む |
クルミ | Jug r 1 (2Sアルブミン) | |
カシューナッツ | Ana o 3 (2Sアルブミン) |
(食物アレルギー診療ガイドライン2022ダイジェスト版より)
皮膚プリックテスト(skin prick test, SPT)
標準プリック針で生の果物 (リンゴ、モモなど)を皮ご と刺す |
生の果物を刺したプリック 針を皮膚に直角に圧迫する |
陰性コントロールとして滴下 した生理食塩水の上からプリ ック針で直角に圧迫する |
できた膨疹の長径と短径を 測定する |
※ | SPTはプリック針という特殊な針で皮膚を圧迫するだけで痛くありません。 また、OFCのようにアナフィラキシーのような重篤な症状が誘発される恐れはないので、外来でできます。 |
1. | 食物経口負荷試験 (oral food challenge,OFC) は、アレルギーが確定しているか疑われる食品を単回または複数回に分割して摂取させ、症状の有無を確認する検査である。 |
2. | OFC は、試験により得られる患者の利益が症状誘発のリスクより大きいと判断できる場合に、確定診断、安全摂取可能量の決定および耐性獲得の確認を目的として実施する。 |
3. | 食物摂取に関連した誘発症状の詳細な病歴、基礎疾患、合併症、免疫学的検査結果を参考にリスクを評価し、OFCの適応および適切な方法、時期、実施場所を決定する。 |
4. | OFC を実施する医療機関は、実施体制により一般の医療機関、日常的に実施している医療機関、専門の医療機関に分類され、対応可能なリスクのOFC を実施する。 |
5. | OFC では、アナフィラキシーなど、重篤な症状が誘発される可能性があり、文書による説明と同意のもとで緊急対応が可能な体制を整備して実施する。 |
(食物アレルギー診療ガイドライン2022ダイジェスト版より)
アレルゲンの除去は必要最小限に | |
アレルゲンがはっきりしたら、医師の指導のもと、原因食物を食べない「食物除去」をおこないます。ただし、栄養不足で健康や成長に影響がでないよう、専門の医師と相談し、除去は必要最小限にとどめることが大切。とくに小さいお子さんには注意が必要です。 | |
加工食品のアレルギー表示を確認 | |
アナフィラキシーを引き起こすリスクが高い「特定原材料」の表示が食品衛生法で定められています。特定原材料とは上記の7品目で、極く少量でも容器包装された加工食品に入っていれば原材料表示されます。 | |
アドレナリン自己注射薬を携帯 | ||
過去に強いアナフィラキシーの経験があったり、その危険があると思われる場合、アドレナリンを自分で注射する自己注射薬(エピペン)を常に携帯しておく。エピペンは患者の状況に応じて、医師が必要だと判断した場合に処方されます。⇒ 相談医 |
生活管理指導表を提出 | |
アレルギー疾患の園児、児童生徒に対する取り組みを進めていくために「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」が作成されています。病型・治療、生活上の留意点、緊急時連絡先に関しての記入欄があります。かかりつけ医に記入してもらって提出し、家庭・医療機関・保育所や幼稚園・学校の連携を密にしておくことが大切となります。 |
誤食時の対応 | |
@子供から目を離さない、ひとりにしない A助けを呼び、人を集める Bエピペン®と内服薬を持ってくるよう指示する 以上、施設内での役割分担を決めておく。 |
|
エピペン®使用のタイミング | |
呼吸器症状(ゼーゼー、ヒューヒュー息が苦しいなど)や全身症状(意識もうろうなど)があれば、躊躇せずにエピペン®を使用し、救急隊(119番通報)を要請する。 |
資料提供いただいた阿久津小学校 養護教諭 石塚万希子先生に感謝いたします。
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