小児急性鼻副鼻腔炎の診断

定  義急性に発症し、発症から4週間以内の鼻副鼻腔の感染症で、鼻閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽といった呼吸器
症状を呈し、頭痛、頬部痛、顔面圧迫感などを伴う疾患
診  断上気道のウイルス感染に続発して発症するが、膿性鼻汁が10日以上持続する、あるいは5〜7日後に
悪化をみる場合は、細菌の二次感染による急性細菌性鼻副鼻腔炎と診断する
耐性菌感染
の要因
@5歳以下の小児  A保育園児  B免疫不全などの合併症  C1か月以内の抗菌薬使用の有無

小児のスコアリングと重症度分類

症状・所見なし軽度/少量中等以上
臨床症状鼻 漏
(時々鼻をかむ)

(頻繁に鼻をかむ)
不機嫌・
湿性咳嗽

(咳がある)

(睡眠が妨げられる)
鼻腔所見鼻汁・
後鼻漏

(漿液性)

(粘膿性少量)

(中等量以上)

軽症:1-3 中等症:4-6 重症:7-8

日本鼻科学会編:急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン.日本鼻科学会誌49(2):143-247,2010


小児急性鼻副鼻腔炎の治療

治療は重症度に応じて行う。

リストマーク 軽  症(スコア1〜3)

急性鼻副鼻腔炎治療アルゴリズム(小児・軽症)

治療アルゴリズム(軽症)

ウイルス感染が主体のため抗菌薬非投与で経過観察する。

5日後に改善が認められなかった場合は、ペニシリン系薬のアモキシシリン(AMPC)またはアンピシリン(ABPC)常用量を5日間投与し、改善がなかった場合は、AMPCまたはABPC高用量または、セフェム系薬のCDTR-PI,CFPN-PI,CFTM-PIの高用量のいずれかを5日間投与する。


※アモキシシリン(AMPC):サワシリンなど

アンピシリン(ABPC):ビクシリンなど

セフジトレン(CDTR-PI):メイアクトなど

セフカペン(CFPN-PI):フロモックスなど

セフテラム(CFTM-PI):トミロンなど

※ここでの"高用量”は具体的には常用量の倍量

鼻処置を優先する


リストマーク 中 等 症(スコア4〜6)

急性鼻副鼻腔炎治療アルゴリズム(小児・中等症)

治療アルゴリズム(中等症)

最初からAMPCまたはABPC常用量を5日間投与し、改善がなかった場合、薬剤感受性を考慮して、@AMPCまたはABPC高用量、ACDTR-PI,CFPN-PI,CFTM-PIの高用量のいずれかを5日間投与する。

これらの治療で改善がみられなければ感受性を考慮した上で、@経口カルバペネム常用量あるいは、AAMPCまたはABPC高用量、BCDTR-PI,CFPN-PI,CFTM-PIの高用量のいずれかを投与する。

※カルバペネム(TBPM-PI):オラペネムなど

鼻処置を優先する


リストマーク 重  症(スコア7〜8)

急性鼻副鼻腔炎治療アルゴリズム(小児・重症)

治療アルゴリズム(重症)

初期治療から@AMPCまたはABPC高用量、ACDTR-PI,CFPN-PI,CFTM-PIの高用量のいずれかを5日間投与し、改善がみられなければ中等症治療の最終段階の薬剤を投与する。

これらの治療で改善がみられなければ感受性を考慮した上で、薬剤の変更や上顎洞洗浄を考慮する。


※セフェム系薬CDTR-PI,CFPN-PI,CFTM-PIの常用量では、ペニシリン低感受性菌(PISP)や耐性菌(PRSP)、β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性菌(BLNAR)の最小発育阻止濃度(MIC)を超える血中濃度を維持できない。

そこで、高用量を用いるとPISP、PRSP、BLNARを十分にカバーする血中濃度まで上昇し、耐性菌感染例においても有効性が期待できる。

鼻処置を優先する

日本鼻科学会編:急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン.日本鼻科学会誌49(2):143-247,2010


リストマーク このページの先頭に戻る