医薬分業を実践して

平成7年10月、高根沢町の光陽台で耳鼻咽喉科・気管食道科クリニックを開業しました。大学では気管食道科学を専攻していましたので、耳鼻疾患の診療は新鮮で、毎日が勉強で楽しく診療しています。近くに同業の診療科の先生がおられないため、近所から多数の患者さんに来ていただいています。

開院にあたり、先輩の先生方からアドバイスをいただき医薬分業を実施しています。以下、医薬分業についてお話します。

高根沢町には調剤薬局は一軒もありませんでしたので、以前より学会・研究会などでお付き合いさせていただいていた製薬会社勤務の秋元氏に相談し、隣接して調剤薬局(光陽台薬局)を開いて頂くようお願いすることにしました。幸いご夫人も薬剤師ですので、お二人で力を合わせて患者さんと世間話をしながら、心のこもった服薬指導、薬歴管理をしていただいているようで、大変患者さんからも喜ばれています。

光陽台薬局 薬剤師さん
当 院    光陽台薬局 若かりし頃の秋元氏

医薬分業して最大の利点は、服薬指導、相互作用、副作用など面倒な薬の説明をすべてお願いし、そのぶん診療に専念でき、窓口業務がスピーディーで患者さんの待ち時間を短縮できたことです。隣に院外処方箋をもっていき投薬を受け取って帰るので、患者さんにとっては二度手間ですが、混雑した外来で慣れない従業員から受け取るよりも薬剤に詳しい専門の薬剤師の方から説明を受け、また自由に質問でき安心です。

光陽台薬局は大変アットホームな雰囲気をもっています。秋元氏は初めての患者さんに薬剤・食物アレルギー体質等のアンケート調査を行い、服薬指導や薬歴管理簿に利用しています。また、患者さんの中には薬が嫌い、副作用が心配、他の常用薬と飲み合わせは大丈夫か等の不安により、勝手に服用を止めたりする人もいるようです。秋元氏は、

「これらを念頭におき服薬コンプライアンスを高め、副作用を未然に回避しつつ服用してもらい、治療効果に結び付けるためには、患者さんのニーズと薬に対する考え方をしっかりとつかむことが大事」

と述べ、薬を渡す際には、とくに起こりうる副作用について説明しています。とくに高齢者では、成人病などで多数服薬していることが多く、飲み合わせを心配しているので、常用している薬と処方箋の薬との併用が好ましくない場合は薬局から疑義照会があり、納得の上で投薬を変更します。患者さんは薬の効能効果を説明してくれると安心し、大変喜んでくれるそうです。

以上のようなキメ細かいサービスは、忙しい耳鼻科の日常外来診療の中ではとうてい困難なことですが、情報開示の時代、今後必要なことだと思います。厚生省は院外処方箋が多くの薬局に散らばる”面分業”を推進しているようですが、

「 かかりつけ医の門前薬局を、かかりつけ薬局とする”門前型医薬分業”が住民にとって最善であり、そうでなければ医師は医療について統括責任をとることはできない」

と水戸市の向井さんは”医薬分業実践マニュアル”の中で述べています。そういう意味でも調剤薬局は、近隣のいわゆる門前薬局で気心の知れた薬剤師でないと、意志の疎通がうまくとれないと思います。

その他の利点としては、薬局のスペースを有効利用できる、人件費が節約できる、卸からの仕入れ・支払い・在庫管理がないなどがありますが、これらは患者さんの二度手間、割高感といった不利を差し引いても、医療サービスを受ける側に十分還元されるものと思います。


(平成8年4月栃耳鼻会報)


戻る
菜の花

菜の花

チューリップ

チューリップ

桜

さくら