診療用放射線の安全利用のための指針


医療機関名 越井クリニック

策定 (最終改定) 令和3年12月

はじめに

診療用放射線の利用に当たってはその医療被曝に係る適正管理が必要であるため、医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第1条の11第2項第3号の2の規定に基づき、当医療機関においては、診療用放射線の安全管理のための責任者(以下「医療放射線安全管理責任者」という)を配置し、医療放射線安全管理責任者の下で診療用放射線の安全管理のための体制や方策を実施することとする。当指針はそれらの基本的な考え方や方針について規定するものです

  1. 診療用放射線の安全管理に関する基本的考え方
  2. (1) 被ばくの3区分及び放射線防護の原則について
    国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告のとおり、被ばくはその対象者及び被ばくの状況に応じて「職業被ばく」、「医療被ばく」及び「公衆被ばく」の3区分に分けた上で、それぞれの被ばくに対する防護を検討する必要がある。また、これらの放射線防護については原則として「正当化」「防護の最適化」及び「線量限度の適用」が必要である。
    (2) 医療被ばくに関する放射線防護の原則について
    当指針における診療用放射線の安全管理の対象は、被ばくの3区分のうち、特に放射線診療を受ける者の「医療被ばく」である。放射線診療を受ける者の医療被ばくでの「線量限度の適用」については、線量限度が設定されると当該診療を受ける者にとって必要な放射線診療が受けられなくなるおそれがあるため、放射線防護の原則のうち「線量限度の適用」は行わない。
    (3) 医療被ばくに関する医学的手法の正当化、防護の最適化について
    放射線診療を受ける者の医療被ばくにおける「正当化」とは、医学的手法の正当化を意味し、当該診療を受ける者のベネフィットが常にリスクを上回っていることを考慮して適正な手法を選択することが必要である。放射線診療を受ける者の医療被ばくにおける「防護の最適化」とは、放射線診療を受ける者の医療被ばく線量の最適化を意味し、放射線診療を受ける者の医療被ばくを「合理的に達成可能な限り低く」する ALARA (as low as reasonably achievable) の原則を参考に被ばく線量を適正に管理することが必要である。
  3. 放射線診療に従事する者に対する診療用放射線の利用に係る安全な管理のための研修に関する基本的方針
  4. (1) 研修対象者
    当院における研修の職種は以下のとおりとする
    ・ 医療放射線安全管理責任者
    ・ 放射線診療を受ける者への説明等を実施する看護師等
    (2) 研修項目
    研修項目は以下のとおりとする
    ア 医療被ばくの基本的な考え方
    イ 放射線診療の正当化
    ウ 放射線診療の防護の最適化
    エ 過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時の対応等
    オ 放射線診療を受ける者への情報提供
    (3) 研修方法
    研修は、予め定めた研修計画に従って当院において実施する。研修は院長が主催する。
    (4) 研修頻度
    研修は、予め定めた研修計画に従って1年に1回実施する。加えて、重大な事例が発生した場合など、医療放射線安全管理責任者が必要であると認めた場合は、臨時に研修を行う。
    (5) 研修の記録
    当該研修を実施した際は、以下の項目を研修記録台帳に記録する
    ・ 研修会日時 ・受講者氏名及び職種 ・研修内容
  5. 診療用放射線の安全利用を目的にした改善のための方策に関する基本方針
  6. (1) 当院における線量管理の対象となる医療機器等
    ・ 単純X線撮影装置・・・1台
    (2) 線量管理の実施方法
    頭・頸・胸部撮影別に設定した撮影条件で撮影しているが、ガイドラインを参考にして、撮影条件の見直し等の対応可能な範囲で評価し最適化を行う。なお、診療目的や画質等に関しても十分に考慮する。
  7. 放射線の過剰被ばくその他の放射線診療み関する有害事例等の発生時の対応に関する基本方針
  8. (1) 医療機関における報告体制
    診療用放射線の被ばくに関連して放射線診療を受ける者に何らかの不利益(有害事例)が発生した場合に、事例を経験した従事者は、遅滞なく、事例の内容を医療放射線安全管理責任者へ報告する
    (2) 放射線診療を受ける者の有害事例等と医療被ばくの関連性の検証
    医療被ばくに起因する組織反応(確定的影響)を生じた可能性のある有害事例等の報告を受けた医療放射線安全管理責任者は、放射線診療を受ける者の症状、被ばくの状況、推定被ばく線量等を踏まえ、当該診療を受ける者の有害事例等が医療被ばくに起因するかどうかを判断する。
    (3) 改善・再発防止のための方策の実施
    医療放射線安全管理責任者は、事例の検証結果を踏まえ、該当する放射線診療の改善のための方策を職員へ周知する。
  9. 放射線診療を受ける者との情報共有に関する基本方針
  10. (1) 放射線診療を受ける者に対する説明の対応者
    放射線診療に従事する者に対する診療用放射線の安全利用のための研修を受講していることとし、放射線診療の正当化については、医師が説明を行う。
    (2) 放射線診療を受ける者に対する診療実施前の説明方針
    以下の事項を踏まえてわかりやすい説明となるよう留意する。
    (3) 放射線診療を受ける者から診療実施後に説明を求められた際の対応方針
    「(1) 放射線診療を受ける者に対する説明の対応者」ならびに「(2) 放射線診療を受ける者に対する説明方針」に沿って対応。
  11. その他留意事項について
  12. (1) 指針の閲覧
    指針の内容に関して放射線診療を受ける者及びその家族から閲覧の求めがあった場合には、原則求めに応じて対応する。また、本指針についての照会には医療放射線安全管理責任者が対応する
    (2) 指針の見直し
    医療放射線安全管理責任者は、1年度に1回、本指針の見直しを検討し、診療用放射線に係る安全管理の体制が確保されているかどうか評価した上で必要に応じて改正する