正常鼓膜(左) |
単純性慢性中耳炎と真珠腫性中耳炎
真珠腫が形成されていない単純性慢性中耳炎と、真珠腫を形成した真珠腫性中耳炎があります。真珠腫性中耳炎は合併症を来たし、生命の危険にさらされることがあるため、早期に見分ける必要があります。
急性増悪時の耳漏で耳鼻科受診者の多くは、小児期に中耳炎を繰り返したり鼓膜換気チューブ留置を経験しています。
急性増悪時、耳漏があると詳細な診察ができないため、まずは抗菌点耳薬を1回3〜5滴、1日2回5日間続け、効果が得られたところで再度詳細に観察します。
単純性慢性中耳炎 | 真珠腫性中耳炎 | |
症 状 | 耳漏(無臭)、難聴(軽度) | 耳漏(悪臭)、その他疼痛、耳鳴、めまい、稀に顔面神経麻痺 |
検 査 | 耳鏡で鼓膜緊張部に穿孔を認める。難聴の程度は穿孔の大きさに依存する | 真珠腫塊は白色か黒褐色の痂皮。 鼓膜弛緩部や緊張部辺縁に穿孔を認める。CT検査、場合によりMRI |
治 療 | 耳漏に対する対症療法。手術は必ずしも不要だが、若年者は鼓室形成術のメリットが大きい | 手術による除去が原則 |
※単純性慢性中耳炎の耳漏は無臭で、難聴の程度は穿孔の大きさに依存する。耳鏡で鼓膜の大部分を占める緊張部(上図)に穿孔を認め、弛緩部は正常。手術は必ずしも必要ないが、若年者では鼓室形成術が成功すれば、聴力が改善し耳栓なしで潜水も可能となる。
※真珠腫性中耳炎の耳漏は悪臭を発するのが特徴で、そのほか耳痛、耳鳴、めまい、稀に顔面神経麻痺が見られることもある。穿孔は鼓膜弛緩部や緊張部辺縁に認める。CT検査で骨融解や合併症の有無を把握する。場合によりMRI検査も必要となる。合併症を引き起こす心配があるため、しかるべき施設で手術による除去が原則。